2018.2.1 |
【連載】戦前築の元印刷工場を甦らせる 第1回 建築の記憶を引き継いで西川純司(アートアンドクラフト/大阪R不動産) 巨大な木造トラスが印象的な、かつて印刷工場だった建物。可能な限り元の魅力を残しつつ、この度アートアンドクラフトがリノベーションします! 3月末からは賃貸募集も開始予定。 「大阪の東の玄関口」とも呼ばれる京橋。この場所に立派な木造トラスを持つ建物が現存します。今となっては聞き伝えでしかなく確かな記録はないのですが、もともと小学校の講堂としてつくられたそう。固定資産課税台帳によると少なくとも昭和14年には建っていました。 建物内には“石版石”がゴロゴロ 建物の中に一歩入ると染み付いた油の匂いを感じることができます。現所有者である鶴身印刷株式会社は戦後にこの建物を取得し、印刷工場としてニッカウヰスキーのラベルをはじめさまざまな印刷物を石版印刷により製造していました。 石版印刷は1798年にドイツのゼネフェルダーによって発明されたそうです。現在の印刷手法としてポピュラーなオフセット印刷の源流になります。 建物を残すために……。 外壁の壁画は廃業を機に行われたアートイベントの一環として描かれたものです。近接して建てられていた第2工場は解体されましたが、4代目の鶴身知子さんは第1工場だけでも存続させることができないかと検討されていました。 建物を残すというのは気持ちだけではできません。存在しているだけで固定資産税や都市計画税が課され、所有者責任として建物の維持修繕コストがかかります。事業用不動産の場合は収益を上げられなければ赤字をたれ流す不良資産として所有者への負担が重くのしかかります。残すためには収益を上げられる不動産としてよみがえらせなければなりません。 建物の記憶を残しつつ、複合施設としてリノベーション 今回のリノベーションでは可能な限り既存の状態を生かし、石版石や木のパレット、印刷物を乾かすための造作材を建材としてリユースすることで印刷工場だった記憶を継承しながら、小規模なオフィス、工房、店舗、ワークショップスペースが混在する複合施設を計画しています。 |
URLをコピー
|
PC版 | copyright(c)大阪R不動産 |