住之江区北加賀屋。知る人ぞ知る、アートを中心にオモロイ人が集まるこの町で8組のアーティスト・クリエイターが各部屋をリノベーションする集合住宅を現在計画中!
始まりから完成まで、連載で紹介していきます。まずはエリアの説明と、これから始まるプロジェクトの舞台となる物件の紹介から。
名村造船所跡地、「クリエイティブセンター大阪(CCO)」は北加賀屋のランドマーク的な存在である。 造船所で栄えた町・北加賀屋
大正時代に多くの造船所が建設され、戦後は造船の町として栄えた北加賀屋エリア。
しかし産業構造の変化に伴い、1931年から北加賀屋で創業していた名村造船所は1979年に府外に移転。1988年以降は休眠状態となっていました。
転機が訪れたのは2004年。名村造船所大阪工場跡地(以下名村)の所有者である千島土地株式会社の芝川氏がとあるイベント会場で出会ったアートプロデューサー小原啓渡氏。小原氏は使われていない造船所があるという芝川氏の言葉を聞き北加賀屋へ。原寸大の船の図面を書くための巨大な原図室や港湾に面したロケーションなど、名村のダイナミックな空間に魅せられ、この場所を面白く使いたい!とアート界隈の仲間を集めNAMURA ART MEETING '04-'34 を立ち上げました。
造船所の面影を残すドック Photo: Yoshiro Masuda 巨大な旧原図室。圧倒的なスケールが造船所跡地であることを象徴する空間。 Photo: Yoshiro Masuda 連続36時間という中にシンポジウム・クルージング・クラブイベントなど多岐にわたる内容を詰め込んだ1回目のイベントVol.00「臨海の芸術論」がマスコミの話題にもなり、名村は一躍脚光を浴びるようになりました。その後、“廃墟のポテンシャルを生かす”というコンセプトのもと、名村造船所跡地全体を「クリエイティブセンター大阪(CCO)」として再生。今では種々のイベント会場・ライブスペースとして使われており、2010~13年の「DESIGNEAST」の会場もここ名村です。
DESIGNEAST02の様子。イベント時には多くの人が名村を訪れる。 Photo: Yoshiro Masuda アートを介して街に人が集まるように
息絶えたかと思われる不動産にもアートの力で新たな血が入り生き返ることができるということを実感した千島土地株式会社の芝川氏。
同社が所有している北加賀屋一帯の土地では多くの民家や倉庫・工場が空き家のまま建っていました。空き家のまま置いておけば固定資産税は安く済むが、人が出入りしない建物は結局解体される運命を辿る。それならばと空き家を現状そのままの姿で安く貸し出すことにしました。元旅館の設備を引き継ぎアーティストのための宿泊施設として再生させたAIR大阪(現・Air Osaka Hostel)をきっかけに、人が人を呼びメディアアート・建築設計・舞台芸術などさまざまな業種のクリエイターが集まるように。思い思いに改装された空間はどこもエッジが効いていて個性的です。
一連の動きはおおさか創造千島財団が取り組んでいる「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想(KCV)」(さまざまなアーティスト・クリエイターが北加賀屋に集うような取り組みを進め、芸術・文化が集積する創造拠点としてエリアの魅力向上を目指すプロジェクト)として現在進行形で進化を続けています。まだまだこれから変わっていきそうな北加賀屋は大阪で今いちばんオモロイ街といっても過言ではありません。
元家具工場を複数のクリエイターがシェアするコーポ北加賀屋。セルフビルドで少しずつ手を加えられた空間は良い意味でカオスな雰囲気でアジアっぽい。 〈KCVエリアマップ〉クリエイティブセンター大阪ができたことがきっかけとなり、その周辺にアーティストたちのアトリエが増えてきた北加賀屋駅の北側に広がるKCVエリア。その多くは知り合いから噂を聞きつけ外から入ってきた人たちだ。※上の図版をクリックすると拡大してご覧になれます。 元社宅をアートな集合住宅に!
アーティストたちが集まるKCVエリアの一番北に位置する元鉄工会社の社宅。外観・内装共にそのまま住めないことはないけれどこれといった特徴もない建物で、社宅としての役目を終えた後は空室がちでした。この建物の所有者である千島土地株式会社から相談を受け、大阪R不動産を運営するアートアンドクラフトがプロジェクト全体のコーディネートを手がけて再生することになりました。
今回は「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想」に則って、部屋自体がアートな集合住宅にリノベーション!インテリア、現代アート、照明、プロダクト、造園、テクノロジーといった「建築設計」という垣根を越えて集まった8組のアーティスト・クリエイターが1部屋ずつプロデュースを手がけます。
RC3階建。団地っぽい外観の社宅が今回のプロジェクトの舞台。 現状の間取りと室内の様子。鉄筋コンクリート壁式構造の建物のため大幅な間取り変更はできない。クリエイターたちはこの空間をどのように変えてくれるだろうか。 普段は様々なフィールドで活躍するクリエイターたちが考える住まいは、もしかしたら私たちの住宅に対する既成概念を壊し新たな気づきを与えてくれるかもしれません。
参画アーティスト、クリエイターは次回・2016年1月頃詳しくご紹介します。乞うご期待!