大阪都心には明治大正から昭和のレトロビルが多く残っています。
そうした物件を好んで借り、ユニークに使ってくれる大阪R不動産のお客さんも少なくありません。
単なる懐古趣味? それだけでは片付けられない魅力の理由がある?
というわけで、何組かのお客さんに、どんな物件でどんな使い方をされているのかインタビューしてみました。
これまで大阪R不動産で紹介してきたレトロビルの数々。 Case1 「入居者が思い思いにカスタマイズ」
アートディレクターの大塚憲一さんは西区立売堀の近代建築を選びました。
大阪R不動産で「立売堀クリエイティブ・ヴィレッジ」というタイトルで紹介している物件です。
「物を大切にする気持ちが昔から強くて、誰かが愛着を持って使っていた空間を譲り受けられたら理想的だなぁって。そんな気持ちでレトロ物件を探していたらこのビルに出会いました」
大塚憲一さん。フローリング張替、壁と天井の塗装、照明機器交換等をビルに入居する内装屋に依頼。 この建物はどの部屋も入居者が思い思いに手を加えていて個性が光っています。
通常、賃貸物件で入居者が改装するには家主が工事内容をチェックし、基本的にどんな工事であれ入居者が退去時に原状回復するのが前提で許可となりますが、この物件にはそんな概念はありません。ビルオーナーに聞いてみました。
「最初に本格的な改装を希望されたのは1階の家具屋さんやね。間仕切を取っ払って天井を抜いて、床にタイルや板を貼ってって。その仕上がりを見てホンマにビックリしたんです。え!? あの部屋がこうなるん!? って。 それからやね、センスのいい若い人が来てくれるし、店子さんの好きなようにやってもらった方がビルが活き活きしてくれるような気がしてきたんよ」
そういうビルのスタンスに共感して集まるのは、建築、インテリア、デザイン、広告、アパレル、写真、IT系と、自然とクリエイティブワーカーの方が多くなり、ビル内での入居者同士のつながりにも発展しているそうです。
チーク材にこだわったハンドメイド家具『CITA-CITA』さんのショウルーム。このビルのリノベーション文化はここから始まりました。Design Gallery Cita Citaのサイト 愛着が持てる自分らしいワークスペースをつくり、次の入居者は運が良ければその空間をそのまま受け継ぐことができる。 せっかくのコダワリの改装。杓子定規で原状回復するのではなく、それを気に入ってくれる人がいればそのまま使ってもらえた方がいいに決まっている。この精神は大阪人特有の「もったいない」、「使えるもんは使えんくなるまでとことん使い倒す」という精神が根底にあるように思います。
(左)建築家Hさんの建築設計事務所。造り付けの棚や無垢フローリングは次の入居者に受け継がれる予定。 (右)「FUN/CRAFT」の藤川一真さんのデザイン事務所は画家のアトリエだった頃の内装をそのまま使っています。FUN/CRAFTのサイト Case2 「コダワリの作品 × コダワリのリノベーション」
ヴィンテージファブリックや革で雑貨や鞄をつくる「adequate」の田中久貴さんは、西区新町の昭和レトロビルでアトリエ兼ショウルームをオープンしました。adequate(アダクワッタ)のサイト
窓から見えるのはW・M・ヴォーリズ設計の大阪教会。 「今でも一部の作業は自宅ですけど他は全部ここでやっています。自宅兼工房じゃ雑音が多くて集中できないので。あと、作品をお客さんの手に触れてもらいたくって、それで工房兼ショールームを探していたんです」
フリーランスで仕事をしている方からは、寝るだけの場所になっちゃっている家と仕事場を一緒にする“SOHO”を望む声も少なからず聞きますが、作品を見てもらう場という店舗に近い目的があるなら、確かに自宅と組み合わせるのは抵抗感があると思います。
「昔、他の場所でアトリエ兼ショップをやっていたときは、売れるものと本当に好きなものとの葛藤があったんです。今回の引っ越しを機に、作品に使う素材も空間も、本来自分が好きなものって何だろうって見つめ直したんです」
つくるものにコダワリがあれば、当然それを見せる場所にもコダワリたい。でもいざ探してみても、なかなか理想の物件は見つかりません。
田中さんが大阪R不動産で借りたのは「2つの顔を持つレトロビル」。1960年築のビルを元々の味を残しつつ、ビルオーナーが少しずつ改装を重ねていったリノベーション物件です。
「2つの顔を持つレトロビル」。新築に近付ける厚化粧リフォームではない、古さを活かしたリノベーションです。 築年が古くなると賃料を下げないといけない。だから出来るだけ新築に似せようと、古い要素を覆い隠す改装をする。ともすればそういう考え方に陥りがちですが、古くなったことを悪いことと思わず、逆に味と思い、残すべきところは残し、相性のいい内装材(たとえば、タイルや木や石など)や建具、設備を選べば“いい歳の取り方をした、雰囲気のあるビル”に再生されます。周辺には築20年も経てば空室が目立つオフィスビルが少なくありませんが、この物件は大阪R不動産でも常に空室待ちの人気物件です。
素材にこだわった田中さんの作品づくりとこのビル。まさに出会うべくして出会った、そんなマッチングだと思います。
Case3 「オーナーの顔が見えること」
ヴィンテージセレクトショップ「K Vintage」のKさんは、中央区北浜の近代建築をショップ兼オフィスに選びました。
大阪R不動産で『こう見えて元ホテルです』というタイトルで紹介している物件です。
1点物の商品が約3坪の店内に所狭しと並びます。床板はホームセンターで木板を購入してDIY改装。 昔から食べ物も洋服もフランスのものが好きだったというKさんが主にパリで買い付ける商品はそのほとんどが1点物。 旅に出てはヴィンテージを買うという習慣が、いつしかショップを持ちたいという夢になったそうです。
「中之島公園の雰囲気が好きで淀屋橋、北浜で探していたんですけど、どこもオフィスしか駄目で、賃料も合わなくて。このビルは営業曜日の制限はあるけれど店舗もOKだからそこが決め手でした。それとやっぱり建物の雰囲気ですね。扱う商品と相性がいいと思うし、このビルの見学が目当ての方がお店を覗いてくれるのも嬉しいです。他の入居者の方には食器やアクセサリーのお店もあって、お話していると楽しいです。それと、ビルオーナーさんのお人柄にも惚れてしまいました」
(左)ホテルとして建てられましたが、今は登録有形文化財のテナントビルに。(右)入居者にとって母のような存在のビルオーナー。 ビルオーナーの上村さんはかつてこのビルで飲食店を営業していたこともあり、長い方だと50年のお付き合いになる入居者もいるそうですが、最近はKさんのように若い方がビルの古さに魅力を感じお店を開いてくれることが嬉しいそうです。
お店を始めたばかりの方にとって、時にはちょっとした世間話の枠を超え、親身になって仕事や人生の相談ごとに乗ってくれるオーナーが近くにいることは何よりの魅力ではないでしょうか。
ビルオーナーの想い × それに応える入居者 = 魅力的なレトロビル物件
いかがでしたか。
今回紹介した3つの事例に共通することは、ビルオーナーのそのビルに対する愛着や、入居者が望むようにしてあげたいという想いがあり、それにユニークな使い方で応える入居者だったということだと思います。ビルオーナー、入居者、建物の3者にとって幸せな関係が生まれていました。
大阪R不動産ではこんな魅力的な物件をこれからも沢山紹介していきます。レトロビルで開業したい方、大阪R不動産がサポートします。